人は、相手に好意を持っていると、
その人の言葉や行動を好意的に受け止めやすくなります。
反対に、一度「苦手だな」「どうせ言っても無駄」と思ってしまうと、
相手の行動まで否定的に見えてしまうことがあります。
これは、誰にでも起こることです。
そして職場では、立場が上になるほど、
自分の「見方」や「感情」が周囲に与える影響は大きくなります。
たとえば、部下への指導。
お客様からのクレームへの対応。
そして、社内でハラスメントなどの問題が起きたとき。
「この人はそんなことをする人ではない」
「この人には言っても無駄」
「きっと悪気はなかったはず」
そんな感情や思い込みが、
知らず知らずのうちに事実の捉え方や判断に影響することがあります。
だからこそ大切なのは、「人」と「行動・出来事」を分けて考えることです。
「あなたが悪い」と、その人自身を否定するのではなく、
「何が起きたのか」
「どの行動に問題があったのか」
「これから、どうすればよいのか」
を冷静に見極めていく。
そのためには、相手を見る力だけではなく、
自分自身の感情に気づく力も必要なのではないでしょうか。
先日、教育委員会から「子どもに寄り添う親であるために」というテーマで
講演のご依頼をいただきました。
その内容を考える中で、改めて感じたことがあります。
私たちは「寄り添う」というと、
「相手の話を聴く」「相手の気持ちを理解する」といった方法に目を向けます。
けれど、その前に大切なのは、
寄り添う側の心が、今どんな状態なのかということです。
イライラしているとき。
腹が立っているとき。
悲しいことがあったとき。
反対に、気持ちが落ち着いているとき。
同じ子どもの言葉を聞いても、
親の感情によって受け止め方や返す言葉は変わります。
これは、職場でも同じです。
上司が部下の話を聴くときも、
部下を指導するときも、上司だって一人の人間です。
だから「感情を持たないようにする」のではなく、
「今、自分はどんな感情で、この人を見ているのだろう?」
と、一度自分に問いかけてみる。
それだけでも、いつもの反応から少し離れて、
自分の言葉や行動を客観的に選べるようになります。
人を育てる立場になるほど必要なのは、
相手を変える技術だけではありません。
自分の感情を知り、自分の見方の癖に気づき、
感情に振り回されずに相手と関わる力。
これは、管理職のマネジメント、部下育成、1on1、
ハラスメント防止、クレーム対応など、
さまざまな場面の土台になる力だと考えています。
私たちの研修では、「感情を抑える」ことを目的にはしていません。
自分の感情に気づき、事実と感情を分け、
相手の人間性ではなく「行動」に目を向ける。
そして、相手との関係を壊さずに、伝えるべきことを伝える。
そんな実際の職場で使えるコミュニケーション力を、
事例やワークを通して一緒に考えていきます。